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「産科危機的出血への対応指針2017」改訂ポイントと検査体制
牧野 真太郎
1
1順天堂大学医学部附属順天堂医院産科・婦人科
pp.1133-1137
発行日 2018年10月1日
Published Date 2018/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207366
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はじめに
産科出血は突発的で大量になることがあり,二次的な弛緩出血を起こして急速に播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)へと至ることも多い.また,大量出血による希釈性凝固障害だけでなく,常位胎盤早期剝離,羊水塞栓症,妊娠高血圧症候群重症型,HELLP(hemolysis,elevated liver-enzymes,low platelets)症候群,死胎児稽留症候群など,早期よりDICとなる消費性凝固障害があることが特徴的である1).
このため,大量出血が起こった場合には,その出血点の確認や適切な止血操作に加え,出血の原因と患者の全身状態を把握しながら輸血のタイミングを考慮することが求められる.
分娩後異常出血(postpartumhemorrhage:PPH)の予測にフィブリノゲン値が有効であるとされ,200mg/dL以下では陽性反応適中度(positive predictive value)100%で重度のPPHが発生すると報告されている2).
海外においては産科大量出血に対して少用量で多量の凝固因子を補充できるクリオプレシピテートやフィブリノゲン濃縮製剤(fibrinogen concentrate:FC)が使用されている.現在,日本ではクリオプレシピテート製剤は販売されておらず,FCは先天性フィブリノゲン欠損症の適応しか認められていない.しかし,近年日本においても産科大量出血に対するFCの効果について論文や学会などでの症例報告が増えてきている.
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