増刊号 現場で“パッ”と使える 免疫染色クイックガイド
1章 こんなときどうする? 免疫染色の“困った”を解決
困った④ バックグラウンドが強い
固定に問題がある
柳田 絵美衣
1,2
1慶應義塾大学医学部病理学教室
2慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット
pp.967
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207325
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固定液による抗原性の流出
■原理・原因
病理検査において主流であるホルマリン固定とアルコール固定では,固定の原理が異なる(表1).ホルマリンはアルデヒド基をもち,蛋白・ペプチド鎖に架橋形成を生じることで抗原を固定する.
アルコールは有機溶剤系と呼ばれ,蛋白の凝固沈殿を起こして抗原を固定する.固定力,形態の保持には架橋剤が優れ,抗原性の保持には凝固剤が優れているが,組織片の収縮が強く,抗原物質の不動化能力は変性型固定液には劣る.ホルマリン固定では,目的の抗原をあるべき場所にとどめておくことができるが,固定力が強すぎるため,抗原自身の性質に変化が起こる.それとは逆に,アルコール固定では,抗原自身の性質は保持できるが,固定力が弱いために抗原をとどめておけず,流出する場合がある.
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