特集 酵素検査法
病理
固定
渡辺 慶一
1
1慶大病理
pp.1298-1303
発行日 1971年12月1日
Published Date 1971/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907425
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固定(fixation)とは,組織細胞の主成分である炭水化物,脂質,ことに組織細胞構造維持の主要素であるタンパクを安定化(stabilize)し,水や有機溶媒にも溶けにくい物質とすることで,これによって,一般組織学,あるいは組織化学,さらには電子顕微鏡観察などの諸操作によっても,変質,変形しない組織細胞の基本構造を保つことを目的とするものである.
このような作用を持つものとしては,‘アルデヒド(aldehyde)’類,‘四塩化オスミウム(OsO4)’,‘塩化第二水銀’ ‘三酸化クロム’ ‘ピクリン酸’ ‘メタノール’ ‘エタノール’ ‘アセトン’ ‘塩酸’ ‘硝酸’などが知られているが,これらの固定作用の化学的原理の詳細については,紙面の制限もあり,ここでは省略し,他の成書1,2)にその説明をゆだねることにする.それより本項では,酵素組織細胞化学観察の操作の一環として行なう‘固定’の,もっと具体的な面に主眼をおいて説明を加えていきたいと思う.
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