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はじめに
遺伝性球状赤血球症(hereditary spherocytosis,以下H.S.と略す)は家族性に発生し,とくに性別及び各人種間には差がみられないが,やや北欧系に多いといわれている.本疾患は貧血,黄疸,脾腫を主症状とし,とくに血液所見では球状赤血球の出現,網状赤血球数の増加,赤血球浸透圧抵抗の減弱,赤血球寿命の短縮,クームス試験陰性などが特徴である.本疾患の原因は骨髄の機能障害1),脾の赤血球破壊亢進2),および脾の血管異常3)などの説がなされていたが,1931年Nageri4)が赤血球の球状化が原因であるとし,その契機を先天的,遺伝的な面に求め,Jacob5,6)らの研究により赤血球膜の異常が指摘された.彼らによると赤血球膜の+Naの透過性が亢進し,それとともに赤血球内に水分が入り球状化する.この時+Naを赤血球外に排泄するためsodium pumpの働きが活発となり,エネルギー源としてATPが消費される.ATPの産生を高めるため膜に存在する燐脂質が消費され,膜形成物質の喪失をきたして膜面積が減少しmicrospherocyteといわれ,現在ではJacob5)らの説が一般に受けいれられている.これらの異常赤血球は脾で捕足,破壊されるために本症は摘脾によって100%臨床症状が改善される疾患である.本疾患では貧血とともに間接ビリルビンの上昇による黄疸がほぼ90%に認められ,長期にわたる過ビリルビン血症の持続は高頻度に胆石を合併しやすく,胆石の発見から逆に本疾患がみつかることも経験されているところである.今回われわれは教室並びに関連病院で経験したH.S.症例17例のうち胆石を合併した7例について検討を加えるとともに若干の文献的考察を加えて報告する.
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