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増刊号 血液形態アトラス
Ⅱ部 造血器腫瘍以外
9章 赤血球系
6 寒冷凝集素症(CAD)
Cold agglutinin disease(CAD)
水間 知世
1
1東京大学医学部附属病院検査部
pp.1052-1053
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206210
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寒冷凝集素症(cold agglutinin disease:CAD)は,寒冷凝集素の存在により,寒冷に曝露した際に赤血球凝集や血管内溶血を来し,貧血などを呈する疾患である.広義の自己免疫性溶血貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)のうち,産生される自己抗体がIgM型冷式抗体(寒冷凝集素)であるものを指す6).CADでの溶血は寒冷凝集素価と比例するとは限らず,低力価でも溶血症状を示すことがある.臨床症状としては,慢性溶血による貧血と,末梢循環障害による四肢末端などのチアノーゼ,Raynaud現象などがある.
CADには慢性経過を取る特発性と,感染やリンパ腫などに伴う続発性とがある.感染に続発するCADは比較的急激に発症し,貧血も高度となることが多い.続発性CADを起こしやすい感染症として,マイコプラズマ,EB(Epstein-Barr)ウイルスが挙げられる.リンパ腫では,リンパ形質細胞性リンパ腫(lymphoplasmacytic lymphoma:LPL)に合併することが多い.
CADの根本治療法はなく,寒冷を避け,十分に保温を行うことが重要である.感染に続発するCADは2〜3週間で消退し,再燃もなく,予後良好である.慢性特発性CADに対しては,リツキシマブの有効性も報告されている.リンパ腫に続発するものについては,基礎疾患によって予後は異なる.
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