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増刊号 血液形態アトラス
Ⅱ部 造血器腫瘍以外
9章 赤血球系
2 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)
Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria(PNH)
吉川 直之
1
1東京大学医学部附属病院検査部
pp.1044-1045
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206206
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発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)は,PIG-A遺伝子に後天的変異を持った造血幹細胞がクローン性に拡大した結果,補体による血管内溶血(Coombs陰性)を来す造血幹細胞疾患である.再生不良性貧血(aplastic anemia:AA)を代表とする後天性骨髄不全疾患としばしば合併・相互移行する3).
臨床所見として,貧血,黄疸のほか,肉眼的ヘモグロビン尿(淡赤色尿〜暗褐色尿)を認めることが多い.時に静脈血栓,出血傾向,易感染性を認める.先天発症はないが,青壮年を中心に広い年齢層で発症する.またまれではあるが,急性白血病への移行もある.
PIG-A遺伝子は,GPI(glycosyl phosphatidylinositol)アンカーの生合成に必須な遺伝子であり,GPIアンカー結合型膜蛋白質の細胞膜表面への局在に必要不可欠である.常に補体の攻撃に曝されている赤血球は,健常者の場合,赤血球膜上のGPIアンカー型補体制御因子であるCD59やCD55により保護されている.しかし,GPIアンカーの生合成に異常のあるPNH赤血球では,CD59やCD55の全部あるいは一部が欠損しているため,感染症などを契機とした補体の活性化により溶血を起こす.
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