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組織検体を用いたバイオバンキングのシステム構築と展望
佐々木 毅
1
1東京大学医学部附属病院 地域連携推進・遠隔病理診断センター
pp.666-668
発行日 2015年8月1日
Published Date 2015/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205990
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「オーダーメイド医療の実現プログラム」は,遺伝子レベルの疾患研究を展開して個別化治療など(副作用などの少ない,患者にやさしい医療)を実現することを目的に,2008年に文部科学省によって立ち上げられたプロジェクトである.これまですでに研究推進のためのバンキングとして,高脂血症5.5万人分,糖尿病4.4万人分,白内障2.6万人,脳梗塞1.8万人,乳癌0.66万人など,約67万人,約200万人分の血清が,東京大学医科学研究所に設置されたバイオバンク・ジャパン(Bio Bank Japan)のバンキング用液体窒素タンクに研究用検体として保管され,研究者に提供されている(図1).
このプログラムの一環として,2014年より主に悪性腫瘍の“組織バンキング”を開始することになったが,“質の高い組織検体のバンキングおよび研究者への提供”がオーダーメイド医療実現のための研究には非常に重要であるとの視点から,どのようにして質の高い検体を採取し,保管し,あるいは移送するかということが議論された.実は,これまでも各施設で手術検体などを用いた臨床検体の“組織バンキング”が行われてきたが,それらの検体を用いて研究(ゲノムシーケンスなど)する際,必ずしも質が担保された検体ではなく,時に研究にはおよそ適さないお粗末な検体もあることが問題視されていた.
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