トピックス
エボラ出血熱—現状と展望
岡部 信彦
1
1川崎市健康安全研究所
pp.662-664
発行日 2015年8月1日
Published Date 2015/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205989
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はじめに
エボラ出血熱〔WHO(World Health Organization)では,必ずしも出血症状を伴うわけではないので,エボラウイルス病(Ebola virus disease:EVD)という表現をしている.以下,本文ではEVDとする〕は,1970年代より中央アフリカを中心に数年に1回くらいのアウトブレイクが発生しており,その点では新たに発生した感染症とは異なり,ウイルス,病態,感染経路などはある程度理解されているものといえる.しかし今回のように,西アフリカが中心で2万例以上の患者が発生した1)という大規模なアウトブレイクは歴史上初めてで,WHOは世界的な公衆衛生上の危機的な事象(Public Health Emergency of International Concern:PHEIC)として,パンデミックインフルエンザ(2009年),ポリオ(2014年)に次ぐ3回目の宣言を行っている2).
確かに,米国,スペイン,英国などでも少数の患者発生がみられたが,その他は西アフリカ諸国で,なおかつギニア,リベリア,シエラレオネの3カ国で99.9%の患者発生が集中しており1),世界中に拡大している疾患ではない.その点は新型インフルエンザの大流行(パンデミック)などとは異なった視点でみる必要がある.しかし,重症化率・致命率は高く,現地での患者発生のコントロール,そして世界への拡散を阻止するためには,現地での医療・公衆衛生のレベルアップ,そしてそれには国際的な理解と協力体制が必要である.
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