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ニューモシスチス・カリニ肺炎の血清学的診断
辻 守康
1
1広島大寄生虫学
pp.514-515
発行日 1989年5月1日
Published Date 1989/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205600
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ニューモシスチス・カリニ(以下,Pc)肺炎は日和見感染の一疾患で,宿主である人が健康な場合には増殖が抑えられて不顕性感染の形をとっており,宿主に免疫能の低下など防御機構の不全が起こると肺胞内で急激に増殖して発症する.これまでの症例も先天性免疫不全患者,あるいは白血病や悪性腫瘍,臓器移植などの治療の目的でステロイドや制癌剤などを長期投与した場合に発症が見られているが,最近ではことにエイズに併発する疾患として重要視されている.
本症の診断はきわめて困難で,確定診断としては開胸肺生検,閉鎖的肺生検,経皮的肺吸引,気管支鏡的生検やブラッシング法により虫体を証明することであるが,現実的には重篤な状態にある患者でこれらの生検を行うことは危険を伴うことが多い.一方,喀痰検査により病原体の検出が可能であれば患者に大きな侵襲を与えず好ましい方法であるが,本症の特徴として肺胞の中に粘稠な物質が詰まって喀出されにくいということがあり,現在は気管支洗浄液が検体として用いられることが多い.そこで安全かつ早期に診断するための方法として,血清学的診断法が大きな意味を持つようになっている.
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