増刊号 誰でもわかる遺伝子検査
Ⅱ.各論—遺伝子検査はどういうときに必要なのか
3.応用編—遺伝子検査を利用する
1)感染症
(12)ニューモシスチス・カリニ
安岡 彰
1
1富山医科薬科大学医学部感染予防医学
pp.1053-1056
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906355
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ニューモシスチス・カリニとは
Pneumocystis cariniiは免疫不全状態で肺に病変を形成する病原体で,従来は極めて稀にしかみられない感染症であった.医療の高度化,免疫抑制を伴った医療,例えば移植医療や癌治療,自己免疫疾患の治療などが普遍的に行われるようになったことにより,みられる頻度が増してきている.特にカリニ肺炎の多発によって発見されたHIV(human immunodeficiency virus,ヒト免疫不全ウイルス)感染症が爆発的に蔓延するに伴い,病院に初めて来院した患者がカリニ肺炎であるということも珍しくなくなってきている.
P. cariniiは栄養型(trophozoite,トロフォゾイト)と嚢子(cyst,シスト)という形態をとること,人工培養ができないこと,抗真菌剤が無効で抗原虫薬であるペンタミジンが有効であることなどから,長い間原虫として分類されてきた.しかし,微生物の系統分類に遺伝子解析を用いた方法が導入され,16S-リボソームRNA遺伝子(16S ribosomal RNA gene)の解析結果で真菌に近いことが示されて以来,保有する酵素の類似性,シスト壁の電子顕微鏡での構造類似性や構成成分(1-3β-D-グルカンなど)の共通性などからも真菌,あるいは真菌に近い微生物と認識されるに至っている.
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