検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
血清スーパーオキサイドジスムターゼ活性測定法とその臨床的意義
坂岸 良克
1,2
1埼玉医科大学・生化学
2埼玉医科大学病院中検
pp.1357-1362
発行日 1987年12月1日
Published Date 1987/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204343
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
スーパーオキサイドジスムターゼという酵素を理解するためには,まずスーパーオキサイドという陰イオンを知らねばならないであろう.したがってスーパーオキサイドアニオンを知るためには酸素分子そのものから述べなければならない.
われわれが呼吸し,また化学反応に関与する酵素は通常,分子の形で存在し,K殼のP(π)電子各4個のうち3個が分子軌道を構成している(図1).これを2個の酸素原子についてエネルギー準位で示すと図2-(a)のように反結合軌道に不対のπ*電子が並ぶ.このことからわかるように,酸素分子はビラジカルで常磁性なのである.これを三重項酸素と呼び3O2で表す.
ところで,放電その他の際に酸素はかなり作用の激しい型に変わる.従来はこれを原子状酸素と考えていたが,実はそうではなくて,図2-(b)のようなπ*電子の偏りまたは逆スピン化によることがわかってきた.これらの酸素分子を一重項酸素と呼び,多くの反応で見られるのは1△gの方と思われる.この状態では空席の軌道は求電子性が強くなるので,電子を渡しやすい物質が近くに存在すると,図2-(c)のようになる.これがスーパーオキサイドアニオンで,生体の中でも観察される.記号としてはO-2で表すが,この分子は三重項酸素というより,むしろ一重項酸素に近い性質がある.
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.