検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
補体活性測定と血清の保存
稲井 眞彌
1
1大阪医科大学病態検査学教室
pp.736-740
発行日 1980年9月1日
Published Date 1980/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202121
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補体はグラム陰性桿菌の殺菌または溶菌にあずかる血清中の易熱性の因子として発見された.このような血清の殺菌,溶菌作用には補体以外に耐熱性の因子,抗体が必要であり,補体は抗体と異なって正常の動物の血清中に存在することが知られていた.さらに補体は抗体が結合した細菌ばかりでなく,抗体が結合した赤血球をも溶解(溶血)させることが明らかにされていた.その後の研究特に1950年以降の研究によって,補体は補体成分蛋白,補体系が活性化される場合の第2の経路であるalternative pathwayの反応にあずかる因子群,および補体系の活性化を制御し,また補体の生物活性を抑制する因子群から構成される反応系であることが明らかにされてきた.補体系は二つの反応経路,すなわちclassical pathwayとalternative pathwayとの二つの反応経路によって活性化された種々の生物活性,すなわちimmuneadherence, phagocytosisの亢進,anaphylatoxinやchemotactic factorの産生,さらに溶菌反応や溶血反応など細胞溶解反応を起こす,classical pathwayは主として抗原抗体複合物によって補体が活性化される場合の経路であり,alternative pathwayはイーストの細胞壁であるザイモザン,イヌリン,LPS,グラム陽性菌の細胞壁など種々の物質によって補体系が活性化される場合の経路である。
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