技術講座 病理
歯の脱灰標本の作り方—歯を含む硬組織検体の脱灰標本の作り方
茅野 照雄
1
1東京医科歯科大学歯学部口腔病理学教室
pp.727-732
発行日 1987年5月1日
Published Date 1987/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204149
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「歯」を病理学的に検査する場合,想定される病変には,むし歯(齲蝕),歯髄の病変(歯髄炎等)および歯の形と構造の異常(歯の形成不全,フッ化物による斑状歯等)などがあります.特にむし歯とそれに伴う歯髄炎は歯科領域で扱われることがもっとも多い病変ですが,一般の病理検査室で扱うことは極めて少なく,歯科系大学の病理検査室においても,これらの病変を日常検査業務として検索する機会は非常に少ないものです.歯の正常構造やむし歯などの病変を形態学的に検索することは,歯科系大学の特に形態学を専門とする研究室で行われており,その検索方法,特に組織標本の作り方は,それぞれの目的に応じて専門的なものとなっています1).
このように考えてみると,日常の病理検査業務において歯を検査対象とする機会は,切除・摘出材料に歯(あるいは歯牙様硬組織)を含む場合に限られてきます(図1).歯肉癌などの場合の切除顎がそうであり,まれですが卵巣の類皮?胞に歯牙様硬組織が含まれる場合もそうです.殊に「歯原性」といわれる顎骨の病変においては,病巣と歯との関係が病変の本体を検索するうえで極めて重要な情報を与えることがあり2),歯と病巣の位置関係を保って標本を作る必要があります(図2).
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