マスターしよう検査技術
硬組織非脱灰研磨標本の作製法
清野 和夫
1
,
白木 頌子
1
,
茅野 照雄
1
1東京医科歯科大学歯学部口腔病理学講座
pp.1595-1601
発行日 1990年12月1日
Published Date 1990/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900464
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はじめに
硬組織の非脱灰研磨標本は,歯科医学領域で盛んに作製されている.歯の表面を覆うエナメル質は97%が無機質であるために,通常の脱灰標本ではほぼ完全に脱灰・消失してしまって,組織学的に観察することができない.したがって,特に歯のエナメル質の正常組織や病的状態を観察するためには,非脱灰研磨標本が不可欠である.病理学的にも,エナメル質齲蝕,エナメル質形成不全症あるいは歯牙腫などの検査において,非脱灰研磨標本が必要である.
脱灰標本では,脱灰操作によって石灰塩分を取り除いた“跡”の状態の組織を観察していることが忘れられがちである.すなわち,エナメル質の例をみるまでもなく,歯や骨の生体組織の検索には,本来,非脱灰研磨標本を観察する必要があることを銘記しておきたい.特に,硬組織の石灰化の程度や骨の形態計測には,非脱灰研磨標本が必須である.しかしながら,日常の病理検査では,脱灰標本でも十分な情報が得られることも事実である.
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