技術解説
骨の大型病理組織標本の作製法—脱灰法による
三友 善夫
1
,
清野 和夫
2
,
三浦 満
3
,
斎藤 菊蔵
4
1東医歯大医学部・病理
2東医歯大歯学部病理
3東医歯大医学部病理解剖室
4東医歯大病院中検病理検査室
pp.1429-1434
発行日 1970年12月15日
Published Date 1970/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907032
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はじめに
骨の大型病理組織標本の必要性については本号1401ページのグラフの冒頭に述べたが,骨・軟骨の病理形態的検索にあたって,その構成成分の何を観察の対象に選択するかにしたがって,厳密には標本作製の方法操作が異なっている.たとえば骨皮質の緻密質と海綿質では固定,脱灰,染色などの条件が違い,骨細胞系(骨細胞,骨芽細胞,破骨細胞,線維芽細胞,ハーバース管内の血管内皮細胞など),骨基質系(膠原線維,線維間物質—粘液多糖類),骨髄の細胞系(顆粒球系細胞,赤血球系細胞,巨核球,細網細胞,リンパ球,組織球,形質細胞,肥胖細胞,脂肪細胞,動静脈,毛細血管,洞の内皮細胞),骨髄の間質系(膠原線維,細網線維),軟骨細胞と間質の線維成分と基質があり,さらに病変の種類(骨髄炎,腫瘍,骨粗鬆症,貧血など)によって標本のでき上がりが均一にはいかない.大型の標本に含まれる組織成分は種類が多いので,いずれの成分にピントを合わせるかが問題である.たとえば,白血病や貧血には骨髄の細胞系をおもな対象とし,ギムザ染色を行ない,緻密骨の基質系では非脱灰の研磨標本により層状構造の変化を観察することがある.他方では詳細な個々の細胞組織の構造の観察は別として,X線写真などと対比したり,病変の広がりと分布状態を全般的な構造の立場で把握するために大型標本を作ることがある.大型標本の使命としては後者のほうがしばしば用いられ,整形外科的領域の疾患では有用である.
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