臨床生理検査と技術 Ⅳ 超音波検査
[1]超音波検査の動向
伊東 紘一
1
1自治医科大学臨床病理部
pp.464-467
発行日 1987年4月15日
Published Date 1987/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204079
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
超音波検査の今後の動向を見通すためには,まず現状を認識する必要がある.超音波が臨床医学に利用されるようになって40年を過ぎた現在,超音波は診断学の手順を根本的に変えてしまった.臨床の現場では,超音波なくしては診断や治療が行えない状態である.
リアルタイム装置の進歩により,すべての医師は血圧計や聴診器と同様に外来や病棟の診察室で超音波装置を取り扱うようになりつつある.すべての医師が超音波像を理解し診察に応用するようになれば,心電図が現在おかれているような状況が出現する可能性がある.しかし,一方では画像診断のもつ根本的な問題点である読影能力差と超音波検査自身のもつ能力差などから,心電図や脳波のような規格化は困難であるとの見かたもある.特に超音波検査は検査や診断に携わる医師や技師の能力差が,重要なポイントになる.超音波が臨床の場で効果を表すためには,装置の能力と検者の能力と被検者(患者)の条件の三つが影響を与える.この中で患者側の条件は,臨床の場ではさまざまにくふうされている.体位を変えたり,水を飲ませたり,負荷を加えたりする.これら多くの条件づけがなされて描出率が向上してきた.装置側の条件も向上し,高性能の装置が出現している.すると最後に残るのは,検者すなわち医師や技師の能力向上である.このためには,医師や技師の教育が重要になってくる.これらのことを踏まえて,超音波検査が各分野でどのように利用され,分後どのような方向へ向かっているのかを考えてみたい.
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.