検査ファイル 用語
補体
木場 幸寛
1
1産業医科大学病院中央臨床検査部
pp.1294-1295
発行日 1986年11月1日
Published Date 1986/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203913
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1.補体の概念
正常動物血清に細菌を破壊する作用があることが1894年Pfeifferによってコレラ菌の溶菌現象で発見されたのが,補体に関する最初の報告である.最初,alexin(防御素の意)と呼ばれ,その後抗体の作用を補完する物質として補体(complement)と名づけられた.補体は,細菌感染で血中に生じた抗体とともに殺菌作用の担い手として,生体防御機構においてその重要性が認識されるようになった.補体そのものは単一的な蛋白成分ではなく,十数種類の血清蛋白因子の集合体である,すなわち,C1がC1q,C1r,C1sの3成分に分けられ,以下C2からC9までの合計11成分から成り立っている.補体系の主な機能は次の三つの生物活性にまとめることができる.
1)細胞賦活作用(cell activation)
2)細胞溶解作用(cytolysis)
3)オプソニン作用(opsonization)
補体の活性化には二つの経路があり,一つは抗原抗体複合体によって活性化される古典的経路(classical pathway)と呼ばれているもの,他は広く自然界に存在するグラム陰性菌のリポ多糖体(lipopolysaccharide;LPS)またはグラム陽性菌の細胞壁(ザイモザンなど)などによって活性化される第二経路(alternative pathway)である.この両反応経路は,C3の分解反応を起こる反応段階で合流する.
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