技術講座 細菌
培養検査法3—脳脊髄液
相原 雅典
1
1天理よろづ相談所病院臨床病理部
pp.439-443
発行日 1985年5月1日
Published Date 1985/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203341
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脳脊髄液(cerebrospinal fluid;以下,髄液と略す)は脳室内部の脈絡叢から分泌され,大脳槽から脳の基部までの中枢神経組織(central nervoussystem;CNS)全体を包むクモ膜下腔内を循環し,組織に栄養を補給すると同時に水力学的なクッションの役割で脳を保護し,髄膜中の主要静脈内へ再吸収される.この髄液の正常な循環が感染による炎症や腫瘍,出血などで障害されると頭蓋内圧の亢進をきたし,髄液の分泌能が刺激されて水頭症となる.
髄膜に炎症が起こると特有の刺激症状や徴候が現われるが,同時に脳組織にも影響が及び,意識障害などが発現することも少なくない.細菌や真菌,原虫により起こされる髄膜炎は,多核白血球の浸潤が強く化膿性髄膜炎の像を呈する.感染の成立は通常,CNSの近位または遠位にある感染病巣から病原菌が血行により運ばれ,血液-脳関門を破り侵入する形が多いが,時に常在菌叢に隣接する部位の頭蓋骨骨折が原因となることもある.新生児の感染は出産時の産道による汚染が原因となることが多い.
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