コーヒーブレイク
肉眼標本作成の専門家が必要
U. Y.
pp.366
発行日 1981年4月1日
Published Date 1981/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202261
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日本全国の死亡者数は約70万人で,最近の5年間ほぼ変動はない.これに比して剖検数は徐々に増加し昭和54年の剖検数は32,000で,5年前に比し30%以上増加している.剖検率も死亡者総数の3.3%から4.3%と増加している.遺体を医学の研究に捧げてくださる方が,年年増加していることになる.剖検して,病気の本態を少しでも明らかにすることは明日への診療の糧になるのであって,剖検は医学にとって欠かすことはできない.
この貴重な剖検材料は医学の研究のためばかりでなく,学生の教育にも是非必要である.今まで病理部門の検査技師というと標本作成(光顕や電顕)や,染色などといったことを誰しもが考えて来た.しかし貴重な剖検材料の肉眼標本を整理保存することは医学の教育を考えるときには欠かすことはできない.現在は真空パックも可能になり,臓器を手にとって観察することもできるが,これとても決して完全ではない.博物館などで病理標本を保存するためには部屋の空調装置,固定液のpHの調整,標本の色調の保持のための工夫など問題点は数多くある.このような仕事は片手間にできることではない.病理の技術者の中にはこれを専門とする人が必要になってきている.これを行うためには自らも剖検の介助に参画して,臓器を傷つけることなく取り出すことからはじまって,固定液の調整などにも注意してこそ,きれいに臓器が保存できる.教育用の標本では病変をみやすくすることは重要だが,それには芸術的配慮も必要であろう.
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