- 有料閲覧
- 文献概要
今年は国際障害者年とされ,これに関連した記事がしばしば報道されている.検査技師として就職した当時,私は夏休みを利用してディアコニアキャンプに参加するのが楽しみであった.ディアコニアとはドイツの奉仕者ディアコニッセ(女性の奉仕者),ディアコン(男性の奉仕者)を意味している.すなわち,これらの人々はキリスト教信者であり,信仰により,他人のために奉仕の生涯を送るために献身した人々で,看護婦,療育士の教育を受けており,病院や施設で働いているのである.ディアコニアキャンプは1週間という短い間ではあるが,参加者は身体障害者への奉仕をとおして"真の奉仕"について考えた.私たちは重症身心障害児と共に軽井沢の山荘で過ごした.1人の子供に2〜3名の奉仕者がつき,身のまわりの一切の世話をする.毎日施設での規則的な生活をしている子供たちに,家庭的な愛情を持って接してあげるようにとリーダーの宣教師は言われた.子供たちのほとんどは歩行はできず寝たきりで,言葉は全く話せない.本当に自分1人では何一つすることができない.朝起きるとまず体温と脈拍数を測定する.体温計も肩から腕にかけて押えていないと動いて落としてしまう.脈拍の測定は最も困難で,大抵は看護婦さんである宣教師にお願いした.これが終わるとオムツの交換,顔をふいたり,口をすすいだりして朝食になる.手の使える子供はできるだけ自分で食事をさせるようにさせた.食欲は旺盛なのであるが手に持ったスプーンに食物がうまくすくえなかったり,せっかく口の中まで持っていっても唾液とともにはき出してしまったりして,胃の中に入るのと外にごぼすのとが半々くらいと思われることもあった.子供たちは甘いものはよく食べるが,酢味のものは嫌う子が多かった.讃美歌を歌ったり,お話をしたり,乳母車に乗せて町まで散歩に行ったり,子供たちを中心にした毎日である.
前奉仕について私たちが学ぶ時間があった.この子供たちは生きていることが本当に幸福なのだろうか,奉仕は単なる臼己満足になっていないかなど皆で意見を述べ合った."キリストの言葉に‘わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは,すなわち,わたしにしたのである’とあります.この子供たちは自分1人では生きてゆけない最も小さい者であり,子供たちに尽くすことはキリストに尽くすことなのです"との宣教師のお言葉は神への奉仕こそ真の奉仕であるとの確信を今でも忍に椿た廿てくれている.
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.