コーヒーブレイク
房州のお盆
O. T.
pp.612
発行日 1979年8月1日
Published Date 1979/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201888
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都会ではとかく季節感に乏しいが,田舎では畑の作物や道端の草木の生育状態から自然に感じとることができる.千葉県の房州地方の農家は1年中作業にほとんど切れ目がない.農家の仕事は名産の房州枇杷,稲作,草花の出荷が主な仕事である.昔は7〜8月は1年中で比較的仕事に余裕の持てる時期で,山そうじ(山や畑の草苅り)が主な仕事であった.
こんなわけでお盆は仕事を休み,こぞってご先祖様の霊をお迎えすることに余念がなかった.房州のお盆はまず,仏壇のかざり付けから始まる.青竹の軸を仏壇の両端に立てこれに萩の枝やススキの葉を添える.そして青い草木で綯った細縄に,まだ実を結んで間もない草木の小枝を所々に刺して仏壇の前に下げるのである.これにはまだ花をおさめたばかりの稲穂,青い果実をつけた柿の小枝,小さい緑のイガのついた栗の小枝,ささげ豆のサヤのついた枝,そして赤く色づいたホウズキの実が用いられる.ナスにススキの茎をさして馬を2頭作り,里芋の大きな葉の上にかざる.ご先祖様はこの馬に乗って里芋の茎で作った杖を携えてお盆に帰ってくるのだそうである.
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