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生化学を生体内でとらえる
井川 幸雄
1
1東京慈恵医大
pp.217
発行日 1981年3月1日
Published Date 1981/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202231
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従来,生化学検査といえばいわゆる検体検査というカテゴリーに入り,血液とか尿の分析ということになっている.しかし,生化学的過程も,本来,生体内(in vivo)で,心臓,脳,肝,腎の場でとらえられればよりよいことはいうまでもない.こういう面では陽電子(ポジトロン)カメラの登場が,画期的なもので,我々はいまや革命前夜にあると言えそうである.
陽電子とはプラスの荷電を持った電子で,発生してもすぐに体内にたくさんある普通の電子(マイナス荷電)と中和して消えてしまうので,体外から計測できない.しかし,そのさい物質は消滅するが,2本のガンマ線が発生し,お互いに逆方向(180°)の方向に飛ぶ.このガンマ線は体をつきぬけるので,普通のガンマカメラでとらえることができる."反電子"と電子が衝突,物質が消えて,エネルギーが発生するというSF小説でおなじみのことが起こることになる.このさい,体をはさむようにカメラを置いて両方に同時に飛びこんできたものだけをとらえれば,これを結ぶ線上に陽電子の発生源があることになるし,この線を各方向からきめれば,X線CTと同様の技術で,発生源の体内分布が浮き彫りになることになる.
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