Japanese
English
特集 代謝と機能
生体内ブローム
Bromine in mammalian body
柳沢 勇
1
Isamu Yanagisawa
1
1東邦大学医学部生化学教室
1Department of Biochemistry, School of Medicine, Toho University
pp.156-162
発行日 1970年8月15日
Published Date 1970/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902846
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ハロゲン類の中で,クロール,ヨードについては,その生理学的意義が明らかになつているが,ブロームに関してはまつたく不明であつた。しかしながら,生体,ことに人体にあつては,ブロームは生理的成分であることは分つており,またブローム加里,ブロームナトリウムの服用によつて中枢神経に対して鎮静的に作用すること,その中毒量によつてはかえつて刺激的に作用することが経験的に知られている。しかし,その作用機構に致つてはまつたく不明である。不明ではあるが,中枢に対して何か密接なつながりをもつものであろうと考えるのは当然である。この実態を探ろうとして,1930年を中心として,主にドイツにおいて盛んに生体内ブロームの研究が行なわれた時代があつた。しかし,当時の分析法の不備,その他の事情から1935年頃をもつて途絶してしまつた。その後1950年頃から放射性ブロームを用いた実験など,二,三の報告があつて現在に至つている。
最近になつて著者らは中枢神経から有機ブローム化合物を分離同定し,この物質が中枢神経に作用するものであることを明らかにした。このことは今まで不明であつたブロームの作用機序,ブローム代謝の研究に端緒を与えるものと考え,ここに昔からの生体内ブローム研究の足あとをたどつてみたいと思う。
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