最近の検査技術
毛根を試料とする微量電気泳動法
荻田 善一
1
,
林 和子
1
,
岩橋 寛治
1
1富山医科薬科大学和漢薬研究所病態生化学
pp.261-268
発行日 1981年3月1日
Published Date 1981/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202244
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遺伝性代謝異常症の診断ならびに病態の解析あるいは保因者診断には,主として血清,血漿,尿,及び唾液などの体液成分のみならず,赤血球,白血球,ならびに組織片などの細胞成分が試料として用いられてきた.しかし,血液,尿や唾液を試料とした解析では,病態の正確な動的病態に関する情報を得ることは必ずしも十分ではない.また,細胞成分を試料とする場合は,患者の皮膚から得られた組織片を培養し,増殖してきた線維芽細胞を用いるのが最も一般的であるが,目的によっては,培養した末梢白血球や妊婦の羊水中に含まれる羊水細胞を培養したものなどが用いられる.
しかし,培養によって細胞の酵素活性が変動することが多く,更にX染色体上の遺伝子の異常によってもたらされる伴性劣性疾患の女性保因者から得られた線維芽細胞は,正常と異常との2群のクローンの混合物である.また,培養中の細胞数により,酵素活性値が影響を受けることがあり,細胞分裂の定常期に活性が最も低く,対数増殖期に活性は対数的に増加することが知られているなど,問題点が多い.これに対して毛根は比較的採取が容易であり,培養の必要がなく,直接試料として用いることができるとともに,伴性劣性疾患の女性保因者から得られた毛根は,正常あるいは異常細胞クローンからのみ構成されている場合があるので,保因者の正確な診断が可能である.本稿において,まず遺伝性代謝診断における解析試料としての毛根の有用性について述べたい.
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