コーヒーブレイク
医療の近代化
U. Y.
pp.838
発行日 1980年10月1日
Published Date 1980/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202144
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厚生省の死亡統計をひもとくと,肺炎,気管支炎,結核,胃腸炎などの感染性疾患は今世紀の初めから昭和20年代までは,大きな死亡原因であった.東京大学の剖検例をみても昭和20年代までは肺結核はいうまでもなく粟粒結核,喉頭結核,腸結核などが数多くみられる,昭和30年代になると悪性新生物や脳血管疾患が死亡統計によれば大きな死亡原因となり,剖検でも悪性新生物が主座を占めてきて,新しい大きな死因として登場してくる.明治になって西洋医学が導入されて以来の疾患分布が,昭和30年代から現在にみる悪性新生物や成人病ないし老人病疾患主体型のそれに変貌してきた.昭和20年はその移行期と言える.これにはペニシリン(1943年),ストレプトマイシン(1944年)などに始まる抗菌物質の発見と普及が大きな原因であろう.
このような時代になってくると,細菌検査が実地医療の中で大きな役割を占めていた時代は去って,中央診療システムが必要となり医療近代化が迫られる.つまり総合的な検査室,手術室,X線診断室,滅菌消毒室,医学写真室,リハビリテーションなどの病院全体の共同利用施設として必要になった.新しい検査機器,それを扱う技術なども高度になり,各科がもつ小さな検査室では設備や技術の点でもとても追いつかなくなったことも原因として挙げられる,このように機運が熟し,多くの先駆者の苦心もあって,昭和30年代になると続々と中央検査室が作られるようになった.現在はこの医療の近代化は広く一般の人にも理解されるようになり,このようなパラメジカルの業務に従事するための人たちも数多くなり,その歴史も4分の1世紀になる.
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