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血液凝固反応は,プロテアーゼ前駆体,補助因子,リン脂質,カルシウムなど,多くの因子が関与する複雑な反応を経て,フィブリノーゲンがフィブリンに変換する反応である.血液凝固系を大きく分けると,図1に示すように,接触相(固相),リン脂質相,液相の三つに分けることができる.凝固の開始は,固相との接触による第XII因子の活性化と,組織因子による第VII因子の活性化により,引き起こされる.これらの凝固因子の性質及び機能については,表1にまとめて示した.血液凝固反応は,本質的には,セリンプロテアーゼの前駆体が次々に活性化される反応であり,それらの反応を増幅または失活させる補助因子が存在している.これらの凝固因子は,蛋白質の精製法や分析法の進歩に伴い,ほとんどが単一にまで精製され,全一次構造の決定された因子も増えつつある.これらの研究により,プロテアーゼ前駆体が限定分解を受けて,活性型に変換する機構が明らかになった.また,特定のプロテアーゼの活性部位や基質を認識する部位,補助因子と結合する部位などが明らかにされつつある.
血液凝固反応は,各凝固因子が溶液中で単純に混ざり合った結果として,トロンビンが形成されるという反応では,決してなく,特定の蛋白質同士,あるいは特定の蛋白質と異種表面とが特異的に認識し合った結果として起こる非常に局在した反応である.これらの血液凝固因子の相互反応の機構が明らかになるずっと以前から,特定の凝固因子を除去したり,吸着させるために,種々の吸着剤が用いられ,血液凝固系の研究の進歩に大きな貢献をしてきた.経験的に用いられてきたこれらの吸着剤の作用は,活性化機構が明らかになるとともに,一次構造のレベルから説明がつくようになってきた.
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