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1947年Belk-Sunderman1)によって,検査データに容認できぬバラツキの存在することが指摘され,我が国においてもこの現状を解決しない限り臨床検査に基づく病態把握が画餅に帰するであろうという認識がしだいに一般化した直以来,検査成績の精度管理に関する意識の変化には著しいものがあり,例えばCV(変動係数)という専門用語は今や臨床検査室の日常用語となっている.臨床検査技師国家試験のカリキュラムに精度管理が加えられてから,それは基本的常識になり,コントロールサーベイに参加したり,プール血清や管理血清をルーチンに利用しX-R管理図を作ることなどは日常茶飯の仕事となった.
今回ここに,精度管理の大きな柱と目されているX-R管理図法を見直す機会を与えられた.X-R管理図による検査室内の精密度管理は精度管理の一つの出発点であり,検査室の実力を上げるのに多大の寄与をしてきたと言えよう.管理図は,元来,工業生産の場での品質管理のための有力な統計的手法である.統計解析を専門とするものとして,常日ごろその工業の場での使われ方に慣れてみると,検査室で管理図を使っている方々の中には,まだまだ管理図本来の意味とその奥深さを理解しているとは言い難いのではないかと感ずることも多い.そこでこの一文では,"臨床検査室での管理図法"を問い直すために,まず管理図の基本的思想を明らかにすることを第一義としたい直それゆえ,臨床検査への無理な翻訳はやめてなるべく工業生産の場の生のままの言葉で表現し,そもそも管理図とは何なのかという問いかけを心にとめて論を進めたい.そしてこれらを踏まえたとき,科学としての精度管理のために,X-R管理図が果たして有力な道具となりうるのかをえてみたいと思う.
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