特集 最近の医学の話題
肺外科の進歩
宮本 忍
1
1国立東京療養所外科
pp.58-59
発行日 1956年8月15日
Published Date 1956/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201726
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大学の外科医局に入つて恩師かろ胸部外科の研究を命ぜられてから早や20年の年月が過ぎ去ろうとしている。大学病院では肺結核の症例が少ないので在局中は肺化膿症(肺壊疽,肺膿瘍),気管支拡張症,膿胸などの患者を扱つたが,昭和15年(1940)清瀬の東京療養所の外科に赴任してからは現在に至るまでもつぱら肺結核を治療の対象としてきた。療養所における肺結核の外科療法は人工気胸術や横隔膜神経麻痺術から初めて胸廓成形術に進み,戦後は化学療法の発達と共にその重点を肺切除術に向けてきたが,今日ようやくそのめざすところまで辿りついたような気がする。結核におかされた肺の病巣を剔出するということは昔から結核外科医の夢であつたから,私はペニシリンを入手するや否や昭和23年(1948)肺切除の研究に手をつけたが,その成績はまことにみじめで昭和23-24年の間に行われた肺切除31例のうち13例(41.9%)が死亡した。そのうちわけは手術後48時間以内の死亡を直接死,2カ月以内の死亡を早期死,それ以後の死亡を晩期死とすればそれぞれ3例(9.7%),6例(19.3%),4例(12.9%)となつている。今日では早期死と晩期死がほとんどなくなり,直接死のみ1%内外に残つており,これは手術手技の改善や気管内麻酔の普及と共に化学療法の発達によるものである。早期死の最大の原因であつた気管支瘻膿胸は今日でも皆無となつてはいるわけではなく,各施設の平均は2〜5%である。
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