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SerratiaはEnterobacterやKlebsiellaに近縁の菌属で腸内細菌科に属している.和名では霊菌と呼ばれ,赤色色素を産生する性質は古くから知られており,本菌属同定の有力な鍵とされてきた.Serratia属はS. marcescensが主要な菌種であり,グラム陰性杆菌であるがその形態は非常に小さい.また,いわゆる弱毒菌の一種と考えられており,培養も容易であり明瞭な赤色色素を産生するなどの性質から,細菌濾過器の性能試験に用いられることがある.
Serratiaは現在,Opportunistic infection,あるいはTerminalinfection(末期感染)の起炎菌として研究者の注目を集めている.1971年ごろであったろうか.臨床材料から分離されるSerratiaの80〜90%は赤色色素を産生しない株であることが明らかにされた.色素非産生のSerratiaを疑う最も重要な点は,Enterobacter,Klebsiellaのように,インドール反応陰性,VP反応陽性,シモンズのクエン酸塩培地に発育する菌株で,特にクリグラー培地やTSI培地の高層部でガスの産生が認められないことである.DNA試験は本菌種を同定するうえで大切であるが,その検査法としてはDNA培地を用いる方法とDNAメタディスク(ヤトロンより市販)を用いる方法がある.私どもは,DNA培地に1%トルイジン青水溶液を0.5%になるように添加し小試験管に分注して斜面培地を作り,これに菌を線状に接種(斜面部の画線塗抹は省略)して判定している.陽性時にはDNA分解により,色素がメタクロマジーを起こすので青色から紫色に変化し,観察が容易である.臨床材料からのSerratiaの検出率は尿,痰,膿,分泌液において,高い値であるが,血液,髄液(外科的処置をした患者のものがほとんど)からも検出される.そしてこれらのほとんどはS. marcescensである.また最近,多くの薬剤に耐性を示す株が増加しており,日常検査のディスク法ですべての薬剤に耐性と判定される菌株も認められる.このような多剤耐性の著しい菌株は尿由来株に多い.S. marcescensはO抗原及び抗原による型別が可能であり,院内感染の感染経路や感染源の追求などに役立っている.
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