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患者は62歳の男性,ヘパトーマの術後である.1977年1月17日に当院の外科で手術を受けており,その前後の生化学検査のデータは表1に示すとおりである.また総コレステロール,遊離コレステロール及びコレステロールエステル比の経日変化を図1に示してある.総コレステロール,遊離コレステロールの測定はいずれも酵素法でコレステロールエステラーゼ(総コレステロール測定にのみ使用),コレステロールオキシダーゼ,ペルオキシダーゼ,4-アミノアンチピリン,フェノールにより赤色キノン色素に導く方法である.エステル比ゼロが出た2月2日の測定では管理血清の値は正常であり,サンプリングに由来する総コレステロール値と遊離コレステロール値との誤組み合わせでもない.
この発色系で遊離コレステロール40mg/dl以下の場合赤色キノン色素の極大吸収の500nmでは465nmに吸収極大を持つビリルビンの影響を受けて正誤差を生じる.このことは遊離コレステロールの値40mg前後の血清にビリルビンの純品を添加し,4-アミノアンチピリン,フェノール,発色系の酵素法で発色させると500nmの吸光度は遊離コレステロールの濃度が不変であるにもかかわらず,ビリルビンの添加量に伴い増加することで証明される.また同じ酵素試薬を用いても4-アミノアンチピリン,ジメチルアニリンを発色系とする酵素法で発色させれば吸収極大が550nmとなるためにビリルビンの影響による正誤差はなくなる.表1に示す2月7日と同9日の遊離コレステロール値は上段が4-アミノアンチピリン,フェノールを,下段が4-アミノアンチピリン,ジメチルアニリンをそれぞれ発色系とした酵素法で測定した結果を示している.上段の値はビリルビンの影響で高値を示し,下段が真の遊離コレステロール値を示している.
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