最近の検査技術
アイソエンザイム
中山 年正
1
1虎の門病院臨床化学検査部
pp.33-36
発行日 1974年1月1日
Published Date 1974/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200342
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
アイソエンザイムとは何か
生体の中には実に多数の酵素が存在し,生体触媒として多くの化学反応をつかさどっている.消化腺から分泌される加水分解酵素群は,酵素のうちでも最も古くから知られ私たちにもなじみ深いもので,アミラーゼ,リパーゼ,あるいは種々のタンパク分解酵素などがある.アミラーゼは唾液腺と膵臓にそれぞれ独立に分布し食物の消化吸収に寄与しているが,このアミラーゼのように同じ酵素作用を働きながら同一個体で分布の異なる酵素は,単一でなく互いに異なった物質(酵素タンパク質)ではないかという疑問は,すでに30年以上も前からWarburgを始め多くの研究者により提唱されていた.しかし,唾液と膵液のアミラーゼが電気泳動により分離されて互いに異なったタンパク質であることがわかったのはごく最近のことである.
アミラーゼと同様にえんえんとした研究が行なわれた酵素はホスファターゼである.ホスファターゼは有機リン酸エステルを水解する酵素であるが,至適pHの相違,組織からの抽出の容易さ,金属イオンによる活性化の程度,基質の種類による水解速度の差などから,少なくとも数種の酵素が存在することがやはり30年ほど前に知られていた.このように同じ化学反応を触媒するにもかかわらず,異なった性格をもつ酵素に対しBamannらはDie isodyname Fermente(等力性酵素)と名づけている.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.