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今さら,螢光抗体法(fluorescent antibody techniques,あるいは免疫螢光法immunofluorescence tests――最近,世界の趨勢として後者のほうがより普遍的に使用されている)とは,と開きなおる必要がないほど,この方法は今日,医学・生物学領域に定着し,実験手技や診断法として欠くことのできない地歩を確保している.しかし,ReinerやHeidelbergerらによって提起され,Coonsらが螢光色素を導入することによって開発されてきた本法も,すでに40年以上の歴史の歩みを経ていながら,本法をより完全な手技にするための国際的な試薬,手法,観察装置などに関する基準化を計る動きが見られだしたのはこの10年間にすぎない.ひとつの手技が確立されるには,それ相当の時間も必要ではあろうが,きわめてメリットの多い本法がそのわりに基準化の軌道になかなかのれなかったのには,それなりの理由がある,その最たるものはとかく理論が先行し,生命ともいえる特異性の確立が遅れたためと,操作と判定に伴う習熟の必要性が,規格化されたキットによる安易な手技に慣れた実験者や技術者に多少敬遠されたためといえよう.しかし,後述のごとく本法に頼らざるを得ない実験や診断法がしだいに明らかにされ,かつ基準化の軌道も正常に動きだした今日,本法の必要性を再認識する層が固着しだしたことは,本法の開発の一翼を20年にわたりになってきた者のひとりとして喜ばしいことである.
本稿では,免疫螢光法自体の詳しい解説は他書1〜6)にゆずることにして,むしろ本法の現状と評価を正しく知るとともに,本法応用の今後への見通しについて解説を試みることにしたい.
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