病人と病気と病院
手術部
村山 良介
1
1京大・中央手術部
pp.12-15
発行日 1973年10月1日
Published Date 1973/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200261
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昭和30年代の初めには,手術は大学病院の各科でそれぞれ独自に行なわれていた.したがって,午前中に外来をやった看護婦さんが午後から手術に回るというのが普通になっていて,手術はえんえんと続いて夜半になることもまれではなかった.このような重労働は各科の"お城"の中で行なわれ,手術のない日にやっと骨休めができるというような形態が大学病院にはあり,これを小型化したものが一般病院での日常となっていた.つまり各科は1つの城の中に住み,その中ですべてのことが処理されていた.しかしこれには無理があった.人間の体が骨だけとか,鼻だけ頭だけではなんの働きもできないのであるから,各科も同じように連絡をしなければ真の診療ができないことがわかってきた.
このころ,それまでの科と趣を異にした科が生まれた.それは麻酔科である.麻酔科は全部の科の麻酔を受け持たねばならない.ちょうどそのころ私は麻酔医になった.そして,出前持ちのように麻酔器を持って何百メートルも離れた科の手術室に出かけていった.各科の独立のしすぎは縦糸だけしかない布であることに気づき,より完全にするために横糸として検査部,放射線部,手術部が生まれてきた.こうして私の出前の仕事が終わったのは昭和33年のことであった.
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