オピニオン
在宅医療の現代的意義
佐藤 保生
pp.242-243
発行日 2014年3月1日
Published Date 2014/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104205
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はじめに
私が在宅医療に取り組むようになって,20年以上がすぎた.そこで見いだしたことは,“在宅医療は患者中心の医療である”ということであった.くしくも,わが国の医療は患者中心の医療に向かっているように見える.なぜ,在宅医療は患者中心の医療になるのか.それは患者宅に出向くからである.出向くという発想に,従来の医療にはない大きな転換が内在している.患者宅を訪問するからには,自然と相手の都合を優先することになる.
家族数の減少に伴って,わが国の家庭の介護力は脆弱になっており,各家庭はぎりぎりのところで介護を担っている.介護者がうつ的になるケースもある.このようなときは,ひたすら介護者の悩みを聞く.私が在宅医療一本で開業してからは,みとったあとは死亡診断書を患者宅に届けることが多くなった.介護者である妻は高齢で運転はできず,駆けつけた若者は診療所の場所を知らないというような状況が,おのずから見えるからである.
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