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特集 在宅医療を成功させる
在宅医療の基本
在宅医療の意義と実際
Significance and Practice of Home Care Therapy
杉山 孝博
1
1川崎幸病院・地域保健部
pp.580-584
発行日 1995年7月15日
Published Date 1995/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901550
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■症例1 寝たきりの妻が夫の死をみとる
10年間寝たきりの妻であるEさんを介護してきた夫(84歳)は,数年前から物忘れなどの痴呆症状が出現し,1994年の夏ごろからは身体の衰弱が急速に進行した.9月になって食事がとれなくなったため,筆者や訪問看護婦による自宅での点滴治療が始まったが,衰弱は進行するばかりで,あと7,8日の命という状態になった.「お二人一緒に入院しますか」と勧めたところ,「私が自宅でみとりたい」というEさんの返事が返ってきた.
夫への点滴やEさんの看護のため毎日訪問し,「いつでも連絡してくださいね」と言って自宅の電話番号まで教えた訪問看護婦の励まし,さらに午後6時まで延長して受けられたホームヘルパーや,昼夜いつでも手足となって支えてくれた知人たちなどの支えにより,約十日後の深夜にEさんは1人で夫をみとることができた.電話で連絡を受けた看護婦は朝早く,病院の当直医を連れてEさんの自宅に駆けつけ,死亡の確認や死後の処置を行って,安らかなみとりを支えた.医療・福祉制度と家族の気持ちが相俟って,不可能と思われるような在宅ターミナルケアが行われた例と言えよう.
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