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はじめに
インフルエンザウイルス感染症は毎年冬季に流行を繰り返し,わが国の人口の5~10%が罹患する疾患である.その臨床症状は短い潜伏期間(1~3日)ののち,突然の高熱,頭痛,関節痛,筋肉痛,倦怠感などの全身症状から始まり,次いで鼻汁や咽頭痛,咳などの症状がみられ,さらに気管支炎や肺炎などを併発することもある.特に小児の場合には中耳炎,熱性痙攣やまれに脳症を発症することもある.また,高齢者,乳幼児,妊婦やさまざまな基礎疾患を有する患者が罹患すると重症化しやすく,入院や死亡の重大な原因となっている1).
2009年春にメキシコで発生したブタ由来新型インフルエンザウイルス:A(H1N1)pdm2009ウイルスは新型インフルエンザとして世界的に流行し,わが国の新型インフルエンザ患者数は約2,100万人と,ほぼ人口の15%が発病したと推定され,従来のインフルエンザ患者数と比較すると,新型は従来型の約2倍の流行となった2).また,ヒトから発見された高病原性トリインフルエンザH5N1は,症例数は少ないものの死亡率は約60%にのぼり,将来的な流行が危惧されている.このようなインフルエンザウイルスのパンデミックが懸念されるなか,わが国においてインフルエンザウイルス迅速診断キットはその迅速性が高く評価され「迅速診断キットで検査を実施し,抗インフルエンザ薬を投与する」という診療の流れがスタンダードとなっている3).しかし,インフルエンザウイルス迅速診断キットには発症初期の感度が総じて低いという問題点があり4),また,待ち時間におけるインフルエンザウイルスの伝播機会を鑑みた場合には,さらなる測定時間の短縮が必要であるとの指摘がなされている.
2012年,和光純薬工業社から磁性粒子を用いたインフルエンザウイルスキット「イムノトラップ インフルエンザA・B」(以下,本キット)が発売された.本キットは,測定時間がわずか1分であることを特長としており,日常診療において有用な効果が期待される.当院において本キットと従来法を比較検討した結果を表1に示す.
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