Laboratory Practice 〈病理〉
骨髄組織標本での鉄染色の工夫と見方
神谷 優美子
1
,
介川 雅之
1
,
小保方 和彦
1
,
田野崎 栄
2
,
手島 伸一
1
1同愛記念病院研究検査科
2同愛記念病院血液内科
pp.692-696
発行日 2013年8月1日
Published Date 2013/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104008
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はじめに
骨髄は赤血球,白血球,巨核球の造血3系統の細胞の他,マクロファージ,細網細胞,脂肪細胞,血管から形成されている.骨髄検査は種々の血液疾患の診断や治療効果など造血動態を知る最も有用な検査で,血液学検索と病理組織学検索が行われる.血液学的検索である塗抹標本は血液造血器細胞の成熟過程や異常細胞出現の有無など細胞形態の詳細を把握するのに非常に優れている.一方,病理組織学的検索の骨髄組織標本(骨髄穿刺吸引のペレット標本)では造血細胞の配列,静脈洞を含む血管系・間質細胞の配列増減,炎症,線維症などの間質の病態の解析に有用である.結核などの肉芽腫の有無や造血器腫瘍以外の悪性腫瘍細胞の骨髄への転移の有無なども把握することができる.
骨髄の鉄染色において,塗抹標本ではベルリン青染色が広く用いられているが,組織標本では同染色をあまり重視してはいない施設も多い.ベルリン青反応によって組織学的に証明される鉄はヘモジデリンとしてであり,同反応でマクロファージ内蔵鉄の程度や鉄芽球(sideroblast)の有無などを調べることは鉄代謝異常の鑑別診断の決め手となる.
本稿では,骨髄組織標本での染色法と見方を解説する.
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