Laboratory Practice 〈病理〉
病理標本の伸展および乾燥条件が染色性に与える影響
山口 大
1
,
塩竈 和也
2
,
竹内 沙弥花
2
,
水谷 泰嘉
2
,
尾之内 高慶
2
,
稲田 健一
2
,
堤 寬
2
1藤田保健衛生大学医療科学部臨床検査学科(現 信州大学大学院医学系研究科病因・病態検査学)
2藤田保健衛生大学医学部第一病理学講座
pp.698-702
発行日 2013年8月1日
Published Date 2013/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104009
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
酵素抗体法(通称:免疫染色)は,今や医学研究や病理診断に欠かせない検索手段である.自動免疫染色装置や染色キットの普及によって,免疫染色は身近で簡単な染色として認識されがちである.しかし,実際にはさまざまな落とし穴が存在し,固定条件をはじめとする種々の要因が染色性に悪影響を及ぼすことがある1).そのなかでも,今まであまり重要視されなかった薄切切片の伸展・乾燥条件が,注意を要する要因の1つに挙げられる.orotate phosphoribosyltransferaseおよびglutathione S-transferaseの免疫染色では,切片を高温伸展することによって陽性シグナルが消失することが報告されている2).さらに,HER2(human epidermal growth factor receptor type2)免疫染色では,切片の高温・長時間乾燥によって染色強度が減弱することが報告されている3).
本稿では,薄切後のパラフィン切片の伸展・乾燥条件に焦点を絞って,病理標本作製が染色性に及ぼす影響について検討する.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.