技術講座 血液
骨髄鉄染色法と臨床的意義
中竹 俊彦
1
1杏林大学保健学部臨床血液学
pp.687-692
発行日 2003年8月1日
Published Date 2003/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101480
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新しい知見
赤芽球はフェリチンレセプターを介して主に組織球から,また,トランスフェリンレセプターを介して血漿トランスフェリンから鉄の供給を受ける.骨髄像の解析では,鉄染色所見は鉄代謝の定量値と整合性のある関係が重視される.そして,赤芽球系と組織球との鉄染色所見からは,鉄代謝と貧血との関係がよくわかる.
しかし一般に,小球性低色素性貧血ならば血清フェリチン著減で鉄欠乏が判断でき,骨髄検査や鉄染色は必須ではない.血清フェリチン値の著減は,組織球鉄の枯渇と整合性が高いからである.
一方,続発性(二次性)貧血になりがちな炎症性疾患,例えば関節リウマチ(RA:rheumatoid arthritis),慢性感染症などでは組織球が傷害されて,貯蔵鉄はあるが小球性貧血になることがある.この原因は貯蔵鉄の放出機能障害(鉄ブロック)が生じるためと理解されている.また,抗結核剤のINH(isonicotinic acid hydrazide)服用は,ピリドキシン反応性貧血と同様にヘム合成抑制という副作用が生じる.これによって,組織球の鉄と赤芽球の鉄とは十分なのに低色素性貧血になることがある.
さらに,溶血性貧血,再生不良性貧血,巨赤芽球性貧血,骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndromes)は,貯蔵鉄が増加する.ことに,鉄芽球性貧血になるとヘモグロビン合成ができなくなった環状鉄芽球が認められるとともに,組織球鉄が著増する.
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