Laboratory Practice 〈輸血〉
自己フィブリン糊の有用性と作製法
牧野 茂義
1
1国家公務員共済組合連合会虎の門病院輸血部
pp.509-512
発行日 2012年6月1日
Published Date 2012/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103560
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はじめに
フィブリン糊は生理的な血液凝固機序を利用した組織接着剤であり,止血と組織修復を促し,術後輸血や合併症を減らす方法として広く利用されている.しかし,市販の同種フィブリン糊はヒトプール血漿からフィブリノゲンとトロンビンを抽出した製剤であるために,たとえ高温殺菌やウイルス不活化処理を行ったとしても,感染症や変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(variant Creutzfeldt-Jakob disease,vCJD)などの伝播,さらに同種免疫反応の危険性は完全にゼロとは言えない.同種フィブリン糊の最初の臨床応用報告は,フィブリノゲンとトロンビンを皮膚移植に使用した1944年のCronkiteの報告1)であり,接着効果以外にも止血効果や被覆効果を有しているとされ,多くの外科的処置に使用されるようになった2).
一方,自己血漿から得られる自己クリオプレシピテート(自己クリオ)を用いた自己フィブリン糊の最初の報告は,1983年のGestringら3)による.近年,自己血輸血の普及に伴い,自己フィブリン糊は多くの診療科で出血量の削減,創傷治癒の促進を期待して臨床応用されるようになったが,保険適用がなく,その使用は一部の施設に限られていた4).2012年の保険改定で自己生体組織接着剤作成術が新規保険収載されたことをきっかけに,新たに自己フィブリン糊作製と臨床使用を始める施設が増えてくることが予想される.そこで本稿では,自己フィブリン糊の作製方法と有用性について述べる.
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