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腸管出血性大腸菌とは
腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli,EHEC)は下痢原性大腸菌の一つで,細胞傷害性の毒素を産生する.この毒素はベロ毒素あるいは志賀毒素などといわれることから,EHECはベロ毒素産生性大腸菌(verotoxin-producing Escherichia coli,VTEC)あるいは志賀毒素産生性大腸菌(Shiga toxin-producing Escherichia coli,STEC)ともいわれている.ベロ毒素(志賀毒素)はベロ毒素1(verotoxin1,VT1)とベロ毒素2(verotoxin2,VT2)の二つに大別され,VT1は志賀毒素1(Shiga toxin1,Stx1),VT2は志賀毒素2(Shiga toxin2,Stx2)とも呼ばれている.VT1はA亜群に属する赤痢菌の一部が分泌する毒素でもあり,VT2はVT1と約55%の相同性を示すとされている.
EHECは菌の表面にあるO抗原(細胞壁由来)とH抗原(鞭毛由来)によって多くの血清型に分類されている.感染者数が多いものは腸管出血性大腸菌O157(EHEC O157)であるが,O18,O26,O111,O128などO157以外のO抗原を保有する大腸菌のなかにもベロ毒素を産生するものがあり,EHECに含まれる.なお,O157とはO抗原として157番目に発見された抗原を有する菌ということである.さらにEHEC O157のうちベロ毒素を産生して重篤な状態を引き起こすことがあるのは,H抗原がH7(O157:H7)とH-(O157:H-)の二つの血清型に属する菌である.
EHECの感染経路は経口感染で,菌が付着した飲食物を介して感染する.特にEHEC O157は少量の菌量で感染が成立する.
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