疾患と検査値の推移
鉄過剰症に対するデフェラシロクス治療
大場 理恵
1
,
張替 秀郎
1
1東北大学病院血液・免疫科
pp.168-174
発行日 2011年3月1日
Published Date 2011/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103078
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はじめに
鉄は生体維持に必須の金属元素で,赤血球のヘモグロビン合成,酸素運搬だけでなく,薬物代謝,各種細胞内の酸化還元反応,細胞の増殖などに関与する.その一方で,鉄は生体内で過剰になると毒性の強いラジカルを産生して細胞傷害活性の原因になる極めて毒性の高い元素であり,鉄過剰症は肝臓,心臓をはじめとしたさまざまな臓器障害を引き起こす.
骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome,MDS)や再生不良性貧血といった骨髄不全症において,繰り返される輸血によって容易に鉄過剰状態になるのは,生体は過剰な鉄を排除する機構をほとんど有していないためである.これまで,鉄キレート療法は重要と考えられていたものの,注射製剤の鉄キレート剤であるデフェロキサミン(deferoxamine,DFO)は連日の持続投与が必要であるため,外来での投与が困難であることから,一般的には鉄過剰症に対して積極的な治療は行われてこなかった.ところが,2008年に経口鉄キレート剤であるデフェラシロクス(deferasirox,DFX)が認可され,鉄キレート療法が容易に行えるようになったことにより,二次性ヘモクロマトーシスに対する予防効果や,臓器機能の改善効果が改めて注目されるようになった.本稿では,鉄過剰症における鉄キレート療法について概説する.
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