COLUMN―形態検査において知っておきたいこと
EDTA依存性血小板減少症―顕微鏡を覗けばすぐにわかる
矢冨 裕
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1東京大学大学院医学系研究科臨床病態検査医学
pp.1107
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102641
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エチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid,EDTA)依存性血小板減少症(偽性血小板減少症)は,抗凝固剤EDTA塩の存在下で抗体依存性に血小板凝集が起きる現象であり,血小板数が偽低値を呈する代表的な例である.
EDTA塩により血小板膜蛋白質のコンフォメーションが変化して新たなエピトープが出現することに伴う免疫反応であり,純粋にin vitro(試験管の中)の反応である.したがって,(EDTAが存在しない)生体内では,(他に疾患がなければ)血小板数は正常であり,出血傾向もない.顕微鏡による血液像の観察ですぐに判別が可能である(図).
本症を見逃すことの結果は重大であり,本来治療が不要である本症に対して無意味な治療がなされる危険性がある.なお,本症と診断がついた場合は,採血直後の測定,EDTA増量,ほかの抗凝固剤の使用,カナマイシン入り試験管の使用などで対応する.
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