- 有料閲覧
- 文献概要
はじめに
2005年7月下旬に米国フロリダ州オーランドで開催されたAACC学会(American Association for Clinical Chemistry,わが国の臨床検査自動化学会に相当)に参加する機会があり,十数年ぶりの海外旅行に胸躍らせた.関西国際空港からシカゴを経由しオーランドへ.関空でスーツケースを預ける際に“テロなどの危機対策としてロックはしないよう”注意を受け,指示に従い預けた.約13時間の飛行後にシカゴで,いったん荷物を受け取り,再びノーロックで預け,バーコード付き預かり証を貰いオーランドへ.約3時間の飛行後に事件が発生した.ターミナルで待てども待てどもスーツケースが出てこないのである.ベルトコンベヤーから出てくる荷物の間隔がドンドン開いてきた.出て来ない.頭の中は真っ白である.慌ててサービスカウンターに行き,同行者に英語で事情を説明してもらう.巨漢の強面の係官に預かり証を差し出すとバーコードをピッピッ.何食わぬ顔で同行者に説明している.通訳してもらうと“5時間後にはホテルに荷物が届くそうです”.“ほんまかいな?”氏名,スーツケースの色・形,今夜の宿泊ホテル名と住所が書かれた紛失物預かり証を受け取り,不安を抱きつつホテルで一夜を過ごした.翌早朝,フロントに恐る恐る電話を入れると2分後にボーイさんがスーツケースを部屋まで運んでくれた.2ドルのチップを渡す.“ああよかった! ええ~スーツケースだけ? お詫びの菓子折りは? チップ2ドル損しただけか”まあ,とりあえず中身もすべて無事であった.翌日,同行者たちと事故を分析してみた.
(1)係官はなぜ自信を持って“5時間後にホテルに……”と言ったのか? バーコードチェックで他空港にあることが確認されたのであろう.
(2)逆にシカゴで引き取り手のない荷物が3~4個残っていた.サービスカウンターには同様の客が数人いた.この種の事故は日常茶飯事なのであろう.
(3)なぜ,預かり証と荷物の確認チェックをしないのか?
帰国後,ある航空会社に電話で確認したが,明確な回答は得られなかった.派手に名前を貼ったり,機内持ち込み可能なものにするなどの自己責任管理が必要なようである.同時多発テロ事件後は手荷物やボディチェックが厳しくなり,筆者も靴まで脱がされた.冒頭に述べたように荷物のロックにも規制がなされた.これらは,テロなどの有事に備えての“危機管理”が政策として徹底された結果であろう.しかし,バーコードで管理されている荷物が届かない,利用した航空会社の“安全管理”の欠如である.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.