増刊号 包括医療と臨床検査
第2章 各論―疾患の診断治療のために最小限必要な検査
17.膵臓の疾患
渡辺 伸一郎
1
1東京女子医科大学医学部中央検査部臨床検査科
pp.1054-1058
発行日 2003年9月15日
Published Date 2003/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101571
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I.急性膵炎(acute pancreatitis)
急性膵炎の診断
急性膵炎はなんらかの原因によって膵内で膵酵素の活性化が起こり膵臓自身が消化される,いわゆる「自己消化」によって起こる急性の炎症性疾患である.軽症の浮腫性膵炎から中等症・重症の出血性壊死性膵炎まであり,重症例では膵局所の炎症にとどまらず全身の重要臓器障害(呼吸不全,循環不全,腎不全,播種性血管内凝固症候群)を起こして死の転帰をとることも少なくない.
成因としてはアルコール性が約40%と最も多く,次いで特発性(原因不明)25%,胆石性20%である.その他,腹部外傷,膵管造影,手術,高脂血症などがある.
主な臨床症状は上腹部痛,悪心・嘔吐,発熱,黄疸,腹部膨満感などである.重症例ではショック,呼吸不全,腎不全など多臓器不全(multiple organ failure;MOF)による諸症状が出現する.
急性膵炎の臨床診断基準1)を表1に示した.①腹痛・圧痛,②膵酵素上昇,③画像所見異常の3項目中2項目以上を満たし,他の膵疾患および急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断する.ただし,慢性膵炎の急性発症(急性増悪)も急性膵炎に含める.急性膵炎と診断されれば原則として入院加療となる.入院後は48時間以内に,表2に示す急性膵炎の重症度判定基準2)に準じて重症度の判定を行い,その重症度に応じた最適な治療を行う.
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