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はじめに
日本人の胆石症の保有率は10~15%あるといわれており,食生活の欧米化により増加の傾向にある.女性,40歳代以上,肥満傾向にある人に多いとされており,年齢が高くなるほどその保有率も高くなる.
胆石症の典型的な症状としては胆石発作といわれている上腹部に突然起こる激しい発作性の痛みがある.脂肪分の多い食事(てんぷら,中華料理など)あるいは卵黄など,胆囊を急激に収縮させるような食物を食べてから数十分~数時間後に突然上腹部痛,右季肋部痛が出現するのが特徴である.痛みは右肩や右背部・肩甲骨間に放散したり,嘔気・嘔吐さらに黄疸を伴うこともある.胆石に伴う合併症としては,このような痛みのほかに,急性胆囊炎,肝機能障害,急性胆管炎,急性膵炎などが挙げられる
黄疸,発熱や悪寒などを伴う際には胆囊炎,胆管炎,膵炎などの合併を疑う.腹痛・発熱や黄疸などの症状を来す総胆管結石や肝内結石症では早急な内視鏡的または外科的治療を要する.
しかし,胆石を持っている人すべてに必ずしもこのような症状が出現するというのではなく,無症状に経過し,検診などでの腹部超音波検査で偶然に胆石が発見される人も少なくない.
また,以前は胆石があると胆囊癌が発生しやすいといわれていたが,現在では胆石と胆囊癌とは直接の因果関係につい否定的な意見が多く,胆石による二次的な要因が胆囊癌の発症に関与していると考えられている.無症状の胆石症に癌が合併する頻度は1~2%と胆石のない人と比べそれほど高いわけではない.しかし,高齢になるに従って胆囊癌合併の頻度は高くなり,胆囊の形態的・機能的異常は胆嚢癌合併の危険因子となるので,手術をしない場合は定期的な超音波の検査が必要となる.
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