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はじめに
日本では少子高齢化の傾向に歯止めがかからず,これを反映した医療費のさらなる増大が危惧されている.増え続ける医療費に対処するため全国82の特定機能病院において2003年4月より入院患者に対する診療報酬の包括評価(診断群分類,DPC;Diagnosis Procedure Combination)が順次実施されてきている.
骨粗鬆症や変形性関節症(osteoarthritis;OA)などの骨・関節疾患は60歳以上での罹病率が高く,健康保険および介護保険制度の健全な維持を阻害する一因として問題視されてきている.このうちOA(関節の構成要素の退行変性により,軟骨の破壊と骨・軟骨の増殖性変化を来す疾患,軽度の滑膜炎を伴う)は60歳以上の約7割(約1,500万人)に程度の差はあれ出現するとされる.一方関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)の罹病率はOAほど多くないが,20歳~30歳代の女性を中心に増加してきており現在70万人程度の患者がいると推定されている.このほか,多関節に痛みや炎症を認める疾患は全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)や全身性硬化症などの膠原病疾患,ライム病や急性B型肝炎などの感染症,痛風や偽痛風などの代謝異常による関節炎がある(表1).これらの関節症状をもたらす疾患を正確にしかも迅速に診断し,最善の治療を行うためには注意深い問診および身体的検査(関節所見および関節外所見)を行った後に考慮すべき疾患を絞る必要がある.次に絞られたいくつかの疾患のなかから最も妥当な疾患を選出するために必要な検査を選択すべきである.このように,本当に必要な検査項目を選択することによって的確な診断が得られる一方で無駄となる検査が減少することが期待できる.以上の診察技能を医師が日頃から心がけ実践すれば,包括医療のなかでの臨床検査の重要性・必要性は今以上に高まると予想される.
本稿では主に外来で臨床医が遭遇するであろう炎症性多発関節症(表1)の診断を進める手順,必要な基本的検査,診断を絞り込むための検査,治療経過を追うための検査などについてリウマチ診療を担当する医師の側と臨床検査部に勤務する医師の両者の立場を踏まえて考えてみたい.
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