増刊号 包括医療と臨床検査
第2章 各論―疾患の診断治療のために最小限必要な検査
14.大腸癌
濵中 裕一郎
1
,
末廣 寛
1
,
日野田 裕治
1
1山口大学医学部特殊専門領域腫瘍病態学(臨床検査医学)
pp.1039-1042
発行日 2003年9月15日
Published Date 2003/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101568
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はじめに
大腸癌は結腸および直腸に生じる上皮性悪性腫瘍を指す.このうち結腸癌は年々増加傾向にあり,わが国の人口動態統計によると過去20年間の死亡率増加は前立腺癌に次ぐ第二位である.さらに2015年には胃癌・膵癌を凌ぎ,予測死亡率は肺癌・肝癌に続く第三位になるであろうと予測されている1).
食事や嗜好の改善など発癌・増殖にかかわる因子を制御目的とする一次予防については未解決な問題も多く,目下のところ大腸癌初期治療のためには早期診断(二次予防)が重要視されている.早期大腸癌の98%は根治可能であり,進行癌であっても遠隔転移がなければ根治可能なことが少なくない.
大腸癌占拠部位は直腸・S状結腸癌が約70%(各々40%と30%)を占め,残りの30%のうち盲腸・上行結腸癌で20%弱を占めている(図1).
胃癌に準じ大腸癌も壁深達度によって早期・進行癌に分類される.粘膜下層までに留まるものを早期癌,それより深く進展するものを進行癌とし,リンパ節転移の有無は問わないと定義されている.早期癌のうち粘膜内癌は組織学的には高分化腺癌であるが,膨張性発育をするため転移がみられず,臨床的には良性の性格を示すという特徴がある2).粘膜下層に浸潤した時点で転移の危険性が増大するため深達度診断は重要である.
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