増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査
各論
3.免疫血清検査
4 抗デスモグレイン1,3抗体
天谷 雅行
1
1慶應義塾大学医学部皮膚科
pp.1203-1205
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101087
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はじめに
デスモグレイン(desmoglein,Dsg)は,上皮細胞間接着装置であるデスモゾームの膜構成蛋白であり,カドヘリン型細胞間接着分子である.Dsgは4種のアイソタイプの存在が知られており,そのうちDsg2はDsgの中で最も初期の発生段階から発現されており,消化管,肝臓,腎臓,心筋などのデスモゾームを持っているすべての細胞において広範囲に発現が認められる.Dsg1とDsg3は,原則的に重層扁平上皮にのみ発現が認められる.Dsg1およびDsg3に対する自己抗体が,自己免疫性水疱性疾患である天疱瘡において水疱形成を誘導する病的役割をしている.
天疱瘡の基本的病態は,IgG自己抗体がその標的抗原であるDsgの細胞間接着機能を阻害することにより,表皮あるいは上皮の細胞間接着が傷害され,水疱ならびにびらんを形成することである.天疱瘡は,従来から疾患概念の確立している天疱瘡(古典的天疱瘡)として,尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris,PV)と落葉状天疱瘡(pemphigus foliaceus,PF),新しい天疱瘡の1群として,腫瘍随伴性天疱瘡(paraneoplastic pemphigus,PNP)の大きく分けて3型に分類される.
Dsg ELISA法は平成15年(2003年)7月より疱瘡の血清学的診断薬として保険収載され,日常診療において稀少難治性疾患のひとつである天疱瘡の診断がより迅速に確実に下せるようになり,血清中の抗体価をELISA法によりモニタリングすることにより病勢の客観的評価が可能となった.
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