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はじめに
心疾患のうちでも急性心筋梗塞(acute myocardial infarction,AMI)は,強い胸痛を伴って突然発症し,生命予後が脅かされることも少なくない致死率の高い疾患である.AMIの一般的治療法として経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention,PCI)の有用性は広く認識されているが,可及的早期にこの療法を実施することが患者の予後向上に大きく影響するため,いわゆる,door-to-needle-timeの短縮が非常に重要である.これを達成するため,迅速な診断と的確な治療処置が要求されることはいうまでもない.
心臓由来脂肪酸結合蛋白(heart-type fatty acid-binding protein,H-FABP)は心筋の細胞質に豊富に存在する可溶性の低分子量蛋白(MW.14.9kDa)である.FABPは,組織ごとにアミノ酸配列の異なる分子種が発現しており,H-FABP以外にも,脳型(B-FABP),肝臓型(L-FABP),小腸型(I-FABP)など9種が知られているが,それぞれアミノ酸配列が異なるためH-FABPだけを免疫学的に区別することが可能である.心筋細胞が心筋梗塞や虚血によって傷害を受けると,心筋細胞中の可溶性低分子蛋白であるH-FABPは速やかに血流中に逸脱する.よって,H-FABPの検出はAMIをはじめとする急性冠症候群の早期診断に非常に有用である1).
われわれはAMI診断マーカーとしてのH-FABPに着目し,イムノクロマト法を検出原理とした全血中ヒトH-FABP検出試薬「ラピチェック(R)H-FABP」を開発した2).本試薬は,検体の前処理や特別な機器を必要とせず,わずか15分で判定が可能であるため,ベッドサイドでのAMI診断用Point-of-care-testing(POCT)検査薬として,非常に簡便である.既に2002年より市販され,現在では広く臨床現場で利用されており,その有用性について多数報告されている3).
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